2013年5月15日水曜日

もうひとつの街


舞台はプラハ、主人公が偶然「もうひとつの街」に紛れ込んでしまう。そこは混沌の世界であり、言語や論理、物理法則さえ異なる。現実の街との境界がも次第に曖昧になって行く。表現された文章もほとんど理解できない。もう一度読み返してみても理解できないだろう。けれど、主人公とともに、その街をさまよううちに、次第に引き込まれて行く。

最後に主人公は、その街に向かう「路面電車」に乗るのだけれど、読み手は見送るしかない。読み手は、しばらくの間、現実の世界で自分の「路面電車」を探すはめになる。

読みながら考えた。どこに行っても、ある場所から別の場所に移動しても、自分の肉体や精神から逃れることはできない。もし変わったと感じたのなら、それは空間ではなく、自分自身の細胞そのものが入れ替わることではないか。そんな妄想のようなものも産み出す小説だった。わからない、けれど面白い小説。

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